なんだか、思い込んでいた世界の間仕切りが嘘だったってわかった。
丸山は外に飛んで出て行ったのだ。
そこはそれまで、羊の冒険とおなじくらい高い堅牢な塀だと思っていた。実際そう見えていた。でも、ちがかったのだ。
これが、今生の別れではないと彼女は言うが、それは果たして事実ではない。本当は結局のところそうなのだ。何かが圧倒的に損なわれてしまった。しらないうちに。まるで、夜中に雪の降ってる間に、街を一変させてしまう降雪のように。
しかしたとえ、塀の中は安全で楽しい天国がひろがっていたとしても、人間がもつ好奇心という飛行機さえもっていれば、いつでもでていける。
思いおこせば、彼女によって世界の一部は作られたと言えるだろう。彼女はもうミライにいて、すでにこちらは見えないばしょにいるが、それは関係ない。その圧倒的な足跡は、セカイに空白を生んでしまうことは必至である。
それに気づいている人は他にもいるだろうか。